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2020.2.1

「愛してる」や「好き」より伝わるもの ~イチローと奥さんのすてきな関係~

マリナーズにいた頃のイチローが、チームの不振や連続200本安打記録と紐づく重圧に苦しんでいたとき、奥さんから「あなたが孤独だったら孤独じゃない人なんて一人もいない。あなたほど見えていないところで応援してもらっている人はいない」と言われて救われた、という話がたまらなく好き。

奥さんはイチローを励ましているようで、尻を叩いているようだし、褒めているようで、忠告しているとも取れるし、背中を押しているようで、そっと肩に手を置いているような感じもする。

そのとき奥さんの頭の中には、イチローを応援している人の声やメッセージがいくつも思い浮かんでいたのだろうか。イチローもそう言われて、誰か具体的な人物を思い起こしたのだろうか、あるいはプロ野球選手としての自分自身を見つめ直したのだろうか……。

などと思いを巡らせた末に、僕はひとつの結論に行き着いた。奥さんはイチローに言葉を贈ったのではなく、物語を贈ったのだ。より正確に言えば、自分の力で苦境を抜け出し、いつも通りの自分に戻るための物語を描くキャンバスを贈ったのだと。

一方が、必要なものを、必要なぶんだけ、必要なときに提供し、もう一方は、それを余すところなく受け取る。そんな夫婦(人間)関係が現実に存在していることに、心が震えた。ふたりの間には、「一の言葉で十が伝わる」関係性が築かれているのだろう。(この次の日のエピソードもすてきなので、気になった方は『イチローのすべて』をぜひ読んでみてください)

人の心には、「愛してる」や「好き」といった言葉ではたどり着けない領域がある。きっと僕は、その領域に達する方法をずっと探しているのだと思う、そこでしか見ることのできない景色を見るために。

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