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2020.5.20

営業ノルマのない不動産会社。“超ホワイト企業”を支えるゆとり

不動産会社でありながら、営業ノルマはなく残業もほぼゼロ。終業時刻を17:10に迎え、忘年会は17:30から始まる“超ホワイト企業”。派手さや華やかさとも無縁で「公務員みたい」とも評される株式会社関西トラストさんのWebサイトリニューアルに、ライターとして携わらせていただきました。

いち取材者の目から見ると、関西トラストという会社はいわば 〈そこにいると妙に落ち着く大きな古民家〉。取材では「平和的で穏やかな人が多い」という声も聞きましたが、環境によるところも大きいのだと思います。ゆとりある家庭環境が育ちのいい大人をつくるように、「トラスト(信頼)」という社名にも表されている堅実経営、安定経営が貫かれた社風は、ハングリー精神や競争心からくる強烈な馬力を生まない代わりに、そこで働く人たちを包み込み、伸びやかにする。

「あまりにも忙しいときは、上司が知らぬ間に仕事を片づけてくれていることもある」「前会長や社長、関連会社の社長らが参加するゴルフコンペに大遅刻したうえに、相当なハンデをもらって優勝してしまった。にもかかわらず、みなさんが笑い話で済ませてくれた」という若手社員の方のエピソードが印象的でした。

きっとそのゆとりは、一朝一夕で生まれるものじゃない。100年近い間、「原則として買った不動産は売らない」という方針のもと、無茶や冒険をせず、急成長を望まず、長い目で見た経営判断を続けてきた帰結でしょう。中途入社された方も「自然と腰が落ち着く感覚があった」と話されていましたが、歳月を重ねることでしか醸し出せない重厚感、安心感があるのだと思います。

激しい浮き沈みやドラマチックなできごとといったストーリー性は乏しいがゆえに、メディアで取り上げられ、世間の注目を集めるような会社ではありません。しかし「目先の利に惑わされず状況を静観し、ほんとうに必要なときしか動かない」姿勢が築き上げた盤石な経営基盤は、何物にも代えがたい財産だと感じました。

どちらかというと「手堅い」=「おもしろみに欠ける」と否定的に見ていた自分の中に新しい視点が生まれたのは、この会社と出会ったおかげです。非常事態が社会の亀裂や分断を招いている今だからよけいに、ゆとりの大切さを思うのかもしれません。