ライフストーリー

公開日 2016.9.27

Story

「会社の遊び心そのものでありたい」

シューズミニッシュ 企画部長 福瀧 賢一さん

尽きない「ものづくり」への興味

20歳の頃にトップモデラーと出会うまで、中学、高校、専門学校時代と、一時的にガンプラからは遠のいていた福瀧だが、ものづくりへの興味が尽きたことはない。

幼い頃から備わっていた分解癖は、その一片である。ハンドル式の鉛筆削りにはじまり、ビデオデッキやウォークマンなどなど。分解したものをもとに戻せないこともあったが、その機械の構造を目で確かめるのが好きだった。そして、それぞれの部品が果たしている役割を知ることにも関心が向かっていた福瀧は、高校時代、友人の壊れたプレイステーションを修理したこともある。

高校時代には、ロボットを製作する「生産部」に所属。大会ごとに定められたルール――たとえばボールを使って作るピラミッドの形状の正確さや制作スピードを競い合う――のもとでおこなわれる全国大会(全国高等学校ロボット競技大会)にも毎年出場した。

ボクサーの体重測定とおなじく、規定重量を満たさなければ試合への出場がかなわないため、1gでもオーバーしていれば、その場でボディにドリルで穴を開けるなどして、即席シェイプアップを実行する光景が大会会場ではありふれていた。

「制約の中でものを作るのがおもしろかったんです。重量を調整するためにフレームに穴を開けたり、くじゃくが羽を広げるがごとく競技が始まった瞬間にロボットが姿形を変えるように設計したり……。どれだけ奇想天外な発想ができるか、汚いことをできるかが勝つための肝でした(笑)。

ふつうの人は思いつかないような裏技を考え出すのが好きなことは、今も変わっていません。「ずるい」というのは、僕にとって褒め言葉。人の意表をついたり、裏をかいたりするのが好きなんです。いま仕事でやっている靴の底型づくりにしても、だいたい全パターン思いつく社長に「こういうやり方あんねや」と言わせたら勝ちやと思っています(笑)。

だから最近、僕が持ち寄ったデザイン案を見た社長から「こいつのやり方、ほんまに汚いと思うわ」と言われたときは、めっちゃ嬉しかった(笑)。ただ社長から「(邪道を狙ってもいいけど)正道をちゃんと理解しておかなあかん」とは口酸っぱく言われているし、自身もそこは忘れないようにしていますね。

何を作ろうか考えるのが好き。作るまでの過程を考えるのも好き。出来上がったものを眺めるのも好き。誰かに見せて評価してもらえるのも好き。いや、よくよく考えてみると、作る過程そのものはさほど好きでもないのかもしれません。実際、作っているときは、はやく完成形が見たい、人に見せたいという思いに駆られて、やたらと焦りますから。

僕は自分自身が評価されるよりも、作ったもの、世に出したものを評価される方がうれしいんです。だからヤフオクに出品したガンプラについて、2ちゃんねるで叩かれていたら落ち込みます。ただスレッドに上がる(批判の的にされる)のは、注目されているということでもある。そういう意味ではよかったかなとも思ったりするんです。

仕事でいうと、靴の展示会のディスプレイを任されるときは、命を賭けて臨んでいる感じですね。多少の手間はかかろうとも、できるだけ新しいことをやっているつもりです。だから展示会に来られた取引先の方が、うちの展示物を見て「おー!!」と唸ったり、驚いたりしているのを見るとたまらなくうれしい。「うわっ、こんな展示の仕方、はじめてやなぁ」とか「こういう見せ方もあってんなぁ」と言われるのもうれしいですね」

 

こだわるからこそ

仕掛けやサプライズに目がない福瀧は、会社の有給を活用して、勉強がてら漫画の原画展やガンダムをデザインしたデザイナーの展示会に足を運んだりもする。「原則として自分が興味あるものしか行かないのは、興味があるからこそ、同じように興味がある人たちにどう見えるのかを考えられるから」だ。

原画を並べている順番や額のデザイン、額の吊るし方、映像が流れるタイミング……。チェックポイントは細々として多岐にわたるためか、同行者から「そこ見る?」と言われることもたまにあるという。なるべく人出が少ないときを狙って行くのは、ほどこされている仕掛けをじっくり観察、吟味できるようにするためだ。

「テーマパークに行ったときもそうですけど、なにか盗んでやろう、どこかで活用しよう、という意識を持ちつつも、純粋に楽しんでいますね。ひとりの客として、「うわっ」て言わされる瞬間はいいものです。いつも、その瞬間に味わう驚きや感動をピークにもっていくようにしているんです。

だからネタバレがあると、めっちゃ怒ります。行くと決めているイベントに関しては、ネットに書かれている感想は絶対に見ません。ネタバレがあると味わえる驚きも感動もまるっきり薄れてしまいますから。

逆に、作る側にいるときには、見た人の度肝を抜きたいから、完成するまで人に見せたくない。人が完成形を目にした一瞬のインパクトに賭けているんです。

商品の見せ方ひとつで人が受ける印象や売れ行きはガラっと変わってしまう。たとえばミニッシュの靴を味気ない棚に置いたとたん、その商品の世界観は台無しになってしまいますから。どれだけおいしい料理を作っても、皿や盛り付けがぱっとしなければおいしそうに見えないのと同じですよね」

ほかのスタッフが撮った、被写体を撮る角度や背景がイマイチな写真を見過ごせないのも、そのこだわりと分かちがたく結びついている。パンフレットなどの印刷物を作る際にも、文字の配置や間隔、見出しの文言のキャッチーさなど、人の制作物に不足があると感じれば、「自分ではやさしく言っているつもりだけど、相手がへこむくらいボロカス言ってしまう」という。

「あとで振り返ったときに改善点が見つかるのはいいんです。そのときにできることができていないというのがどうしても引っかかる性格なんですよね。

社長から冗談交じりに「全然人に興味ないやろ」と言われることもあるんですけど、それで納得してしまうというか、反論する気は起こらないんです。実際、ひとりで考えごとをしている時間のほうが好きだし、積極的に人にからんでいくこともない。インドア系の趣味が多いのもそれで説明がつくのかもしれません。だからといって、それが自分の短所や弱みだとも思えない。何はともあれ、人に興味がないくせに人に作ったものを見せたがる僕はめんどくさい性格ですよね(笑)。

将来的には、社長の度肝を抜くような底型を作りたいなと。靴に関わっている以上、靴の歴史に残るようなものを作りたいとも思っています」

 

会社の中にエンタメを

そんな福瀧が、ドレッドヘアーがトレードマークの日吉慶三郎(RegettaCanoe 社長)をブルドックに見立てたフィギュアを制作したのは最近のことだ。高本が進めていた「個々の社員をキャラクター化したイラストを作る」という企画の一環として、フィギュア制作に没頭する福瀧のそばを、スタッフは「また何かおもろいもん作ってんなぁ」とでも言うかのように微笑みながら通り過ぎていった。

高本は言う。「もちろん行き過ぎたときには注意するけど、基本的には自由に泳がせたほうがいいと思って接している。お兄さん役をやるのは苦手やけど、フォロワーとしては超一流。もし新しく会社を立ち上げるとしたら、右腕になってほしい存在です」

福瀧は言う。「肩書きこそ企画部長ですけど、部署の人たちをまとめきれていない感じはありますよね(笑)。実際、企画畑が長い向(むこう)さんの方がしっかりしていますから。
会社の人たちは、あいつまた仕事で遊んでるわと思いながら僕を見ているのかもしれませんけど、そう思われても全然構わない。ただ、そうやって伸び伸びやらせてもらっていることには感謝しかないですよね。

好きなものづくりに関わる仕事ができていること自体、すごく幸せなこと。ストレスをほとんど感じることなく働けるミニッシュでは、朝、出勤したくないという気持ちになったことがないですから」

仕事と遊びがボーダレス。「仕事をしている感覚を持たずに仕事をしているときがけっこう多い」という福瀧の個性を生かす場所として、高本はいずれ社内で「エンタメ部」を設立したいと考えている。

おなじ方向を向いている福瀧も言う。「今後は、会社の中にエンタメ要素を取り入れていきたいですね。具体的に思い浮かぶものはないけれど、強いて言えばGoogleみたいな会社がモデルケースでしょうか。働いてる人たちの仕事で遊んでる感じが伝わるように会社のおもしろさを発信していきたいし、僕自身、会社をおもしろおかしくできる人でありたいなと。会社の遊び心そのものでいることが理想ですね(笑)」

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