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あらぬ希望にすがり続ける「現実をよく知らない」患者。現実を受け容れることが最善だと考える「現実をよく知る」医師。患者は医者の立場がわからないし、医者は患者の気持ちがわからない――。両者の間に厳然と存在する溝が、この物語のテーマであろう。

「ことばは知識の案内人」というコンセプトのもと、1945(昭和20)年から2005(平成17)年まで、戦後60年の時代が生んだ「新語・流行語」を収録した『新語・流行語大全』。いろいろと新たな発見があっておもしろかった。

5年ほど前に、自費出版で本を出したことがある。内容を一言で説明するなら、山形県西川町という小さな田舎町で暮らす人びとのインタビュー集だ。僕がそこに身を置いていたときに直接聞いた話をまとめたその本は、これをきっかけに町を訪れる人が増えれば、と考えてつくったものでもある。

「キレイ事を言わない介護士だけ読んでください」そんなタイトルのAmazonレビューに惹かれて手に取った本。結論から言えば、正解だった。人間の暗部をかき集めて組み立てたようなストーリーにはハッピーエンドのハの字もなく、爽やかな読後感とは無縁だが、ある種の感動をもって胸に迫ってくる作品だった。

この話を聞いたとき、軽い衝撃を覚えた。否、それは、自分が立っている土俵が音を立てて崩れ落ちていく快感だったのかもしれない。脳内の隠し扉が開いたような感覚とも言える。4年ほど経った今でも、変わらないその感覚は「自分の経験や価値観で物事を判断するべからず」という戒めとなり、僕の胸に残っている。

「心の豊かさ」ほど、定義があいまいな言葉はない。行き過ぎた現代文明に対立する田舎での自給自足的生活や「足るを知る」精神を礼賛、肯定するニュアンスでよく使われる言葉だが、少なくとも僕は、そういった部分で「心の豊かさ」を感じられない人間である。